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Wind Veil - 秋山裕和
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※神官文字:別名ヒエラティック

※聖刻文字:別名ヒエログリフ

      どちらも古代エジプトで使われた3種の文字の1つ

      記念碑やパピルスなど遺跡以外の日常生活にも使われた

 

※パピルス:古代エジプトで使われた紙、パピルス紙 。カミガヤツリと呼ばれる植物から

      作られる

      当時の高級品は純白で罫線があるものもあった

      英単語「ペーパー(Paper)」もパピルスに由来している

 

 

                        コトバンク様、ナゾロジー様、羊皮紙工房様より一部抜粋

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外に比べて建物の中はひんやり涼しく、燃えるような暑さを避けるにはピッタリの場所だった

2人の後ろをついて行きながら少し長い廊下を進むと中庭のような場所があり、 30人程が自分の技を磨いていた

 

 

アステヌ   「ここはヘルゥの弟子達が日夜練習を続けている場所なんだ。

        闘技場の闘獣士を目指す者達や警備隊の卵なんかも集まっているよ」

ヘルゥ    「俺は弟子を取ったつもりは一度もないがな……勝手に集まってくるもんだからたまに来て体を動かす相手をしてもらってる                 だけだ」

アステヌ             「いいじゃないか。口数は少ないし目も半目だからずっと睨まれてるみたいで怖いけど 的確なアドバイスをくれるって

                                 一部の間じゃ評判だよ」

ヘルゥ    「褒められてるんだか貶されてるんだか…」   

 

 

その横を通り少し進んだ先の角を曲がると鍵がかかった扉があった

アステヌは持っていた鍵を使い扉を開け中へ入っていった。その後に続いてヘルゥとエトーレは部屋の中に入る

部屋の中に入るとアステヌはぐっとロープを引いて重りを上げた

すると何かが作動してガラガラと音が鳴り始めると太陽の光がふんわり室内に入り込んできて 部屋の中を優しく照らし始めた

部屋が明るくなるとボロボロになった古そうな書物やまだ新しい本などが棚にギッシリ詰められて いるのが見えた

中央にある不思議な道具は魔法でできているのか不思議な文字を浮かび上がらせている

 

アステヌ   「ヘルゥ達の弟子達が集まる場所といったけどここには、この国に現存する古い書物なんかも保存されている場所でもあるんだ。                この建物は太陽の日差しが当たりにくい場所にあるから室温が低く保てて、こういう物を保存しておくのに最適なんだよ」

エトーレ   『なるほど、どうりで涼しいと思いました』

 

 

エトーレはピョンとジャンプして案内された席に座るとヘルゥは前の席にどさっとに座り、 アステヌは書物を持ってきてヘルゥに手渡した

ヘルゥは手渡された書物を軽く目を通しながらエトーレに尋ねた

 

 

ヘルゥ    「あの薬のせいなのかは分からんが、その姿から変われないんだろ?」

エトーレ   『そうなんです。何か方法はありませんか?』

ヘルゥ    「これを見ろ」

 

 

そう言って手に持っていた書物をエトーレによく見えるように机の上に置いた

 

 

エトーレ   『…何て書いてあるんですか?』

 

エトーレは首を傾げながら言った

 

 

ヘルゥ    「そうか。お前は字が読めないんだったな。この国で教育を受けてないんだから無理はない。

              だが実を言うと俺もほとんど読めないんだ。神官文字や聖刻文字で書かれてあるもんでな」

アステヌ   「そこで、僕がついてきたって訳さ」

 

 

アステヌは少し得意げな表情をした

 

 

アステヌ   「この書物にはある1人の物語が書かれていてね。実在した人物なんじゃないかって研究者達の間では言われてるんだよ。                     そこで色々調べてみたらこんな物が出て来た」

ヘルゥ           「昔、ある1人の男はお前と同じように姿を変える事が出来なかったが、 ある時姿を変える事が出来るようになったらしい。                 書物には目立つように

        《歪む世界は鮮明に、先端、熱い、内から開くと入り込む光の矢、この時我、新たなる力を持つ》

        こう記してある。意味は分からないが覚えておくといい…」

エトーレ   『歪む世界に光の矢?本当に全く意味がわからない…』

アステヌ   「そうだね。でも覚えておいて損はないはずだ。なんたって知識は盗めないからね。一生役に立つはずだよ」

エトーレ   『分かりました』

アステヌ   「それとエトーレ。もう1つ言っておかなければならない事がある」

エトーレ   『?』

 

 

アステヌは真剣な表情をして門番とうなずき合いエトーレを見て言った

 

 

アステヌ   「この書物には短命という言葉が度々出てくるんだ…つまり…言いたい事は分かるね?」

エトーレ   「それって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルゥ    「まあこれは書物なんか見なくても分かっていたかもな。俺たち獣人族は獣と人の2つの体を持つ。

        昔は別々の体だったのに同族同士で愛さなかった神罰として同時に2つの命を持つ呪われた種族なんて

        言われているだけあってな。大きなメリットもあるがその分デメリットも大きいんだろう。

        この国で暮らすなら命の長さはそこまで気にはならないだろうがヒトから見れば短命だそうだ。」

アステヌ   「元々エトーレのお母さんが飲んだ薬はこの国で暮らせなくても少しでも長く生きたいという意見によって作られたものなんだ。                                だから再び僕らのような姿になれるようになれば長くは生きられないかもしれない」

ヘルゥ    「薬は高価だしそうそう手に入るものではない。せっかくその姿になったんだから俺はそのままでいいと思うんだがな。                          けど、どちらのメリットもデメリットも伝えたんだから最終的にはエトーレ自身がどうしたいか決めるといい」

エトーレ   『……分かりました。後で考えてみます

                  ……あの、ヘルゥさん。ずっと気になっていたんですが闘技場の敵っていうのはどんな感じなんですか?』

 

ヘルゥ    「…………」

 

 

 

 

 

中々返って来ない返事に疑問を持ちエトーレが顔を上げるとヘルゥはコクコクと眠っていた

 

 

アステヌ   「あー!もうまた寝て。涼しくて薄暗いから気持ち良いのは分かるけど寝ないでよ」

 

 

そう言いながらヘルゥを揺さぶるアステヌ

 

 

エトーレ   「戦ってる時は違ったけど、いつも門番さんは眠そうですね」

アステヌ   「そうだね。まあこうなるのも仕方ないといえばそうなんだけど」

エトーレ   「何か原因が?」

アステヌ   「うん。君も入ってくる時に見ただろうけど国を囲んでるあの壁は外からやってくる動物達を眠らせる為に音を流しているんだ。                  実際に僕ら獣人族や人間達にはほとんど影響がないし音もほぼ聞こえないから気がつきにくいんだけど、どうしても長い間

                 近くで聞き続けているとその影響を少なからず受けてしまうみたいでね。

                 昔からこの国に攻め入るには人を乗せて空を飛べる鳥や砂漠を駆け抜けられる動物達が多く利用されていたからその為さ」

 

エトーレ   『そうか…だから来る時に鳥達が突然眠ってしまったのか…』

アステヌ   「一応、今も防衛のためにあるから効果はあまり同族以外にペラペラ話すものじゃないよ。

                 本当は眠らせるより攻撃出来る物の方が良いんじゃないかって意見もあるんだけど、人間達に利用されてる動物達を

                 痛めつけるのはどうなんだって話になってこの形になったらしい。僕らの祖先や神々は人間だけじゃない、

                 動物でもあるからね。

                 でも最近じゃ闘技場のお陰で同族殺しも盛んだからいつ変わってもおかしくないんだ」

エトーレ   「目を覚まさせる方法は無いんですか?」

アステヌ   「あるよ。僕らが話しかければ起きるはずだ。僕らは唯一動物と会話出来る種族だから起きてと声をかけてやれば良い。

                 起きてから数時間の間にこの国から離れればその後の影響はないよ。

                 まあいつでもどこでも寝るコイツの眠気の覚ませ方は分からないけどね」

 

 

そう言いながらヘルゥの耳を引っ張るアステヌ

 

 

 

ヘルゥ    「……んん………… 」

少し痛そうな表情をしながらも目を開けようとしないヘルゥを見て苦笑いをするエトーレとアステヌ

 

 

エトーレ   『あはは、大変そうですね』

アステヌ   「まあ流石に長い間一緒にいれば慣れてくるけどね

                 ほら起きて。エトーレに少し技でも教えてやりなよ」

 

 

ペチペチと頰を叩くと眠そうな目を擦りながら、はぁっとため息をつき目を開けると

 

 

ヘルゥ    「……行くぞ」

 

 

と一言告げて席を立った

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