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アラビアの秘宝  - M.A.mix
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闘技場まで残り3日目の朝

 

 

 

 

 

 

 

 エトーレ      『昨日はすみませんでした!今日からもどうかよろしくお願いします!』

ケイ         「いや、もう相手はしない」

エトーレ             『…‼︎  …でも俺、どうしても強くなりたくて それで―――』

ケイ      「代わりにヘルゥ師匠が直接手合わせしてくれるそうだ」

エトーレ    『え?』

 

 

ケイがそう言うと中から出て来たのは意外な人物だった

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ヘルゥ    「……」

 

 

 

エトーレ   『‼︎  あ…貴方は、初めに会った…!』

ヘルゥ    「…アステヌに一戦だけでもと何度も頼まれてな。せっかくの睡眠時間を何度も邪魔するから面倒だけど来てやった…」

アステヌ   「驚いた?エトーレ。彼は元々闘技場の闘獣士だったんだ

                 訳あって今はもう闘技場に出ることは無いだろうけど、技は今も一級品のはずだよ」

ケイ     「という事でエトーレ。今日は師匠と1戦やってくれ」

 

 

驚いて口を開けているエトーレに対しヘルゥは頭をガシガシかきながら言った

 

 

ヘルゥ    「はぁ……ほら、ボケっと突っ立ってないでさっさとやるぞ」

エトーレ   『っ!はい!』

 

 

ヘルゥとエトーレは互いに距離を取る

 

 

エトーレ        (チャンスだ…この人に認めてもらえれば闘技場で勝つ方法が分かるかもしれない…

                  まだケイさんには1度も攻撃を入れられてないけど、シャミラさんに教えてもらった後居ても立っても居られなくなって              1人でよく考えながら体を動かしてみたんだ。

                   感覚だけど昨日までと力の入り方が違った気がする…     だから、試してみる価値はあるはず!)

エトーレが構えるとヘルゥも構える体制になる

ケイ                     「準備はいいか?…では、始め!!」

 

 

掛け声と共に走り出すエトーレとヘルゥ

 

 

エトーレ       (姿勢を低くして一気に走るあの走り…やっぱり一緒だ。 ヘルゥさんがケイさんの師匠なら動きは似ているはず…

          なら最初に俺が取るべき行動は!)

 

 

エトーレは前に進むのをやめ突然後ろに走り出す

 

 

ケイ       (…昨日までと動きが違う…何をするつもりだ…)

ヘルゥ                「…敵を背にして逃げるつもりか?」

 

エトーレは狭い壁際に来ると軽く壁を登り、後脚で壁を蹴って門番の頭上を飛んだ

 

 

ケイ・ヘルゥ     「…‼︎」

 

ヘルゥは急停止して後ろを振り返えった

 

エトーレ             『これでどうだ!!』

 

エトーレが大きく口を開け門番の首元目掛けて噛み付こうとしていた

 

ケイ        (なるほど。狭い場所なら攻撃を避けにくくなる… 更に壁際なら背後に回られる事もない。確実に考えた上での行動だ。               だが、師匠に対してそう上手くいくかな…)

 

 

 

ヘルゥ    「……意外とやるじゃないか」

 

そう小さく笑って呟くと門番は近くにあった重い土袋を手に取りエトーレに投げつける

 

エトーレ   『うわあ‼︎』

流石によけられず一瞬視界を奪われヘルゥを見失った

 

ヘルゥ    「もう少しだったな!!」

エトーレは思いっきり蹴飛ばされドンッ!っと鈍い音をたてて壁に当たった

 

 

エトーレ   「くそっ!もう1回!!」

 

すぐに起き上がると今度はヘルゥを壁際に追い詰めていく

狭い場所まで来るとエトーレは近くの壁を蹴って飛んだ

 

 

ヘルゥ    「もう一度飛ばされたいか?」

 

再びヘルゥの蹴りが飛んできた。 その時だった。

エトーレは体を丸くしてクルッと空中で回りかわすと、蹴りを避け入れようとしたその足に 引っ掻き傷を入れた

 

 

ヘルゥ    「っ‼︎」

アステヌ   「やった!攻撃が入った!」

 

 

喜ぶアステヌと驚いた表情をするヘルゥとケイ

 

エトーレ   『どうです?俺の爪は!』

ヘルゥ    「へえ…傷を付けられるなんて思ってなかったけど

                傷を付けたって事は俺も力を出しても良いって事だよね」

そう言ってヘルゥはエトーレの攻撃を避けながら再び元の場所へ誘い込む

 

元の場所へ来るとヘルゥは少し距離を取り、手に着いている武器の先を伸ばした

動物の爪が刃になったような形をしたその武器は鋭く太陽の光に当たって輝いていた

 

ヘルゥはその武器を使い地面を素早く2. 3度引っ掻くと小さな砂嵐を巻き起こした

小さな砂嵐はエトーレと門番2人をすっぽり包むのには十分すぎる大きさだった

中に包み込まれると砂が目に入って来て視界が塞がれた

 

 

エトーレ     (‼︎ 何だこれ!目が開けられない!) エトーレはなんとか片目を開け必死に状況を把握しようとした

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アステヌ    (ヘルゥの得意技 久しぶりに見たな…闘技場では相手がこの中に包まれると必ず負けるなんて言われて賭け殺しなんて名前                                      までついて呼ばれてたっけ)

 

 

エトーレが視界が塞がれ戸惑っていると砂嵐を鋭く突き破るような蹴りが飛んできた

避けられず思いっきり建物の柱に向かって蹴飛ばされる

 

 

エトーレ      (まただ………いつもと変わらない投げ飛ばされるこの感覚……

                               でもいつもいつもぶつかる訳には…!)

 

 

空中でなんとか体制を立て直すと柱を蹴ってヘルゥに距離を一気に近づける

 

ケイ                        (ほぉ…師匠の技を受けて立て直すとは…

          先程の空中での身のこなしも、何度も投げ飛ばされるうちになるべく痛みが少ない体制を取ろうと自然に学んだか…)

 

ヘルゥは再び素早く地面を引っ掻き砂嵐を巻き起こすと行方を眩ませる

 

 

エトーレ                (クソっ…いくら近づいてもこの中じゃ何も見えない…どうすれば……

                                 でも何も見えないのはヘルゥさんだって同じ筈なのに何で俺の場所が分かるんだろ…)

 

 

エトーレは警戒して辺りを見回そうとして体の方向を変えた瞬間

 

ヘルゥ     「はぁっ!!」

 

再びヘルゥの鋭い蹴りが砂嵐を切り裂き蹴飛ばされる

 

エトーレ    (なんだ…何が俺の居場所を…)

ズサアッと音を立て、なんとか耐えたエトーレはまたもや砂嵐に包まれる

エトーレ               (考えろ……もし…もし自分がヘルゥさんならどうする…‼︎)

 

その時自分がズリッと後ずさりをしたその直後鋭い爪が一瞬向かってきたのが見えた

 

エトーレ               (っ‼︎ もしかして音…!!)

間一髪で避けるとエトーレは反撃に出たがヘルゥは体をしならせて綺麗にかわした

 

 

アステヌ               (ヘルゥの攻撃をかわした…⁉︎攻撃は当たってないみたいだけどまさかかわすなんて…)

エトーレ               (よし。なんとなくだけどわかってきた…)

 

 

 

ヘルゥ    「……ッチ。アイツ、気付きやがったな。  だけど!」

エトーレ     (だけど、このままかわすだけじゃヘルゥさんには勝てない…!)

 

砂嵐に包まれるとジッと音に神経を集中させる

 

 

エトーレ      (もし失敗したら何で駄目だったか。次はどうしたら良いのか…

                                そうだ…さっき俺は狙いを定めていなかった…だからもしこの状況で攻撃を当てるなら…!)

 

エトーレはジャリッとワザと音を立てた。 瞬間飛んでくる攻撃

だがその攻撃は当たることはなかった

 

ヘルゥ                 「なに、いない⁉︎……はっ‼︎」

 

かわされたヘルゥが見たものは、大きく地面を蹴って上空へ飛び出したエトーレが後数センチで 自分に向かって噛み付こうとする瞬間だった

 

ドサっと音を立て地面に倒れるヘルゥ

エトーレの体制はそのまま力を入れれば鋭い牙が首元に刺さり致命的な一撃を与えることが可能な状態だった

 

 

しばらく驚いていたヘルゥはフッと笑うと

 

 

ヘルゥ    「負けだ……」

 

と清々しい表情で言った

 

 

 

 

 

 

アステヌ   「!!凄いよエトーレ!ヘルゥに勝つなんて!一度も当たらなかったのに急成長じゃないか!」

駆け寄ってきて自分の事のように喜ぶアステヌ

エトーレ   『あはは。ありがとうございます。2人のアドバイスのお陰で勝っちゃいました』

 

 

 

 

 

 

ケイは喜ぶ2人を横目に体についた砂をぶるぶると払うヘルゥの元へ行き尋ねた

 

 

ケイ        「師匠。なぜ避けなかったんですか。貴方なら最後の攻撃は避けられたでしょう」

ヘルゥ    「……少し気が変わっただけだ」

 

 

そう答えるとエトーレの元へ行き

 

 

ヘルゥ    「ついてこい。お前に見せたいものがある。」

 

 

そう言って中に入っていった

 

 

 

アステヌ   「あ!そうだった。エトーレがこの勝負に勝ったら見せてあげてようって 約束もしたんだった!さ、早く行こう。」

エトーレ   「…!はい!」

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