top of page
砂丘の風 - mix
00:00 / 00:00

取り残されたエトーレはしぶしぶシャミラが待つ上の階の部屋へ

広くはないが綺麗に飾られた廊下で会う数人の小間使い達は少し驚いてエトーレを見ると、すぐに頭を下げエトーレが

通りすぎるのを待っている

 

 

エトーレ             『ここかな…』

小さく呟いて部屋の中を覗いた

 

 

シャミラ             「あら、来たわね。さあ私の隣へいらっしゃい♡」

そうシャミラはエトーレをわざとらしく誘惑するように言う

エトーレ             『あ、あの……この状況はやっぱり……お、おかしいと言うか…』

部屋の前で戸惑うエトーレにシャミラは立ち上がりゆっくり歩み寄ると、しゃがんで目線を合わせ

シャミラ             「うふふ、ほんとに可愛いわね。何を想像しているのかしら?それとも、そういう事がお望み?♡」

エトーレ             『か、からかわないで下さい!』

シャミラ             「ごめんね♡可愛い反応するから面白くってつい」

軽く舌を出しウインクをして両手を顔の前で合わせ軽く謝ったシャミラは部屋の中へと招待する

シャミラ              「 さあ、こっちよ」

ストーリー16.jpg
ストーリー 15.jpg
ストーリー フリガナ.jpg
シャミラ 部屋 2.jpg
ストーリー フリガナ.jpg

そう言ってシャミラが座った場所と反対の場所に座るエトーレ

 

 

エトーレ              『あの、それでイイコト、とは…』

シャミラ              「そうね、何処から話そうかしら。エト、貴方さっきの様子だとあのイケメン君たちと暮らしているのかしら?」 エトーレ              『はい』

シャミラ              「そう、楽しそうに暮らしてるようで良かったわ。でもエト、貴方また一緒に暮らすつもりなの?」

エトーレ      『…どういう事ですか?』

シャミラ              「ここでは私達がいるから言葉は通じるけど、あのイケメン君たちとの意思疎通はどうするつもりなの?」

エトーレ              『あ………えっと…』

 

 

少し言葉に詰まるエトーレ

 

シャミラ      「…まあ意思疎通はなんとかなるとしても、あの身なりだと普段からよく戦って いるのでしょう?」

エトーレ             『毎日のように頻繁ではないですけど、戦っていないと食べていけないというか…』

シャミラ             「なら、尚更その姿だと不利ね」

エトーレ             『どういう事ですか?』

シャミラ             「見てて…」

 

 

そう言ってシャミラは立ち上がると軽くジャンプをして空中でクルッと回ってみせた そして一瞬のうちに姿を変えた

 

 

17.jpg
18.jpg
Untitled 44 5.jpg

シャミラ   「にゃおーん!」

エトーレ          『‼︎一体何が?』

シャミラ             『ふふ。びっくりした?さっきアスティが言った通り私達の種族はこうして動物の姿にもなれるのよ                                         わざわざこの姿で過ごす人は数少ないけどね。でもたまには気分転換になるし暗闇の中でもよく見えるようにな                                  るのよ。まあ暗闇でも見えやすくなるのは 私の場合だけどね。

                                どんな力が高まるかはそれぞれだけど私達は人間と動物両方のメリットを受けられるのよ』

エトーレ   『へえ!凄いです!俺もやってみたい!』

シャミラ   『簡単よ。先ずは頭でイメージして、それからグッと体に力を入れれば!』

 

 

そう言うとまた軽くジャンプして

 

 

シャミラ             「ほら!この通り元の姿!」

エトーレ             『…い、イメージしてグッと力を…よし…えいっ!』

 

 

見よう見まねで軽くジャンプしてみるエトーレ しかし上手く行かずに地面に激突してしまう

 

エトーレ             『うわっ‼︎…いたたた…』

シャミラ             「ちょっと‼︎大丈夫?」

エトーレ             『はい…』

シャミラ             「おかしいわね…普通は息を吸うのと同じように自然と出来るはずなんだけど……

        やっぱり薬を飲んだせいもあるのかしら」

エトーレ   『なら俺はシャミラさん達のようにはなれないって事ですか?』

シャミラ   「そんな事は無いはずよ。」

 

 

 

 

するとエトーレが入ってきた方からドタバタと焦って走ってくる音が―――

 

 

小間使い   「シャミラ様‼︎大変です!」

シャミラ   「なに、どうしたのよ」

小間使い   「そちらの方の中のご友人の1人であるシャーロッテ様が拐われたとのご報告をアステヌ様から!」

エトーレ   「……っ!!シャーロッテさん⁉︎」

シャミラ   「はあ?まさかまた奴隷商人じゃないでしょうね?」

小間使い   「いえ、奴隷商人ではない様ですが……」

エトーレ   「あの!シャーロッテさんはどこに?」

 

 

 

するともう1人遅れて駆け上がって来る音が聞こえて

 

 

 

アステヌ   「シャミラー!大変だ!エトーレの仲間の1人が拐われてこのままじゃ1週間後の 闘技場の

                               舞い人にされる!」

シャミラ           「何ですって?」

 

46.jpg
21.jpg
20.jpg
19.jpg
アステヌ 駆け込み.jpg

シャミラは一瞬眉間にシワを寄せて言った

 

 

アステヌ    「はぁ…はぁ…多分主催者はザラームだ…

        近頃こうして盛り上げ役を連れてきてるって話題なんだ 」

 

エトーレ    「舞い人?」

シャミラ    「舞い人は闘技場で使われるの。闘技場では一部の貴族などの上級市民たちが主催者として代わる代わる

          しているんだけど舞い人がどんな事をさせられるかは主催者の趣向によって変わってくるわ。

                                 例えばは闘獣士同士が戦って勝敗を決した後に、負けた方の舞い人が殺されたり見世物にされたりと

                                 酷い扱いを受けるのよ。

          殺されるにしてもショーを行なって演じた後に殺したりや流血量も決まりはないわ。

          けど案内人の言う通り主催者がザラームで間違いないのなら今説明した闘獣士同士のショーに使われるはず。

                                 つまり賭けられた方が負ければ」

 

シャミラは親指で首をピッと切る動きをした ]

 

 

シャミラ    「って事よ。」

エトーレ    『そんな!何とか出来ないんですか!』

シャミラ    「そうね……最良の方法とは言えないかもしれないけど私達の中の1人が闘獣士として出るとか…」

アステヌ    「…いや……妙案かもしれない…

         舞い人は試合が始まるまで闘技場の地下にいるはずだ。当然潜り込むにしても 警備はいるだろうし、その中を

                                掻 潜るのは難しいだろう。地面を掘って地下に潜り壁を突き破るにしても一週間じゃ地下の分厚いであろう壁は破れない

         だろうし、破れるとしても 場所なんて分からない。

                  仮に今言った方法のどちらかが成功したとしても警備隊以外にも人は沢山地下にいるはずだ。つまり見つかる可能性が

          高すぎる。見つかって捕まりでもしたら助けるどころの騒ぎじゃない。

          なら、全員で高いリスクを背負うよりも闘獣士として誰かが出た方がいい。」

 

エトーレ    『それなら、レオさんやカルロさん達が出れば‼︎』

アステヌ    「それは無理だ。

         闘技場に出て戦っていいのは俺たち獣人族か猛獣、モンスターのどれかだ。

                      もし破れば君の仲間も僕たちも全員即牢獄行きか闘技場の闘獣士として死ぬまで戦わせられる」

エトーレ    『なら、誰か確実に助けられる人はいないんですか⁉︎』

シャミラ    「そうねぇ……アイツなら力は持っているでしょうけど…闘技場に出ることはしないでしょうね」

 アステヌ      「そうだね。わざわざ自ら再び入るとは思えない。」

エトーレ     『そんな!じゃあどうしよう…』

 

 

シャミラ     「………私は1番戦闘慣れして且つ条件を満たしているエトが出るのがいいと思うんだけど」

アステヌ     「…うん、確かに…。本当なら責任を負って僕が出るべきなんだろうけど戦闘に関してはさっぱりだし本気で助けるなら

         エトーレが出るのが最善なのかも」

シャミラ        「戦えないのは獣人族ほぼ全員に当てはまるんだから仕方ないわよ。

         だって国民が一生戦わなくてもいいように作られたあの大きな壁と警備隊が守ってくれるこの国に住んでるんだから。」

エトーレ     『悪いのはアステヌさんじゃなくて攫った奴らだからアステヌさんは責任を負う必要はないと思います。

          でも俺は…俺が戦うなんて無理ですよ…。姿を変えることだってできないし…』

 

アステヌ      「ありがとう二人とも.。エトーレ、改めて僕から君にお願いしてもいいかな…?僕も君の仲間を助けたいんだ」

エトーレ      『俺…ほんとに、才能がないんです…』

するとシャミラは顎に当てていた手を離し何かを思いついて言った

シャミラ    「ねえ。闘技場に出る事は無いだろうけど技くらいなら教えてくれるんじゃないかしら?」

アステヌ    「そうだね、可能性はあるかも…」

エトーレ    『でも!……でも、1人で戦って勝ったことなんて1度も……』

 

 

するとアステヌは屈んで

 

 

アステヌ    「ごめん、エトーレ。君の大切な仲間がこんな事になってしまって…

         僕も出来る限りの事は協力するよ。まだ時間はあるし一緒に何とかしよう」

シャミラ    「そうよ!今戦えって言われてる訳じゃ無いんだしなんとかなるわよ !」

エトーレ    『で、でも………』

それでもまだ不安気なエトーレをみたシャミラ

 

 

シャミラ    「もう!こんな所でウジウジしてても何にも解決しないわよ!

                絶対に助けられ無いって決まった訳じゃないし解決出来るかもしれない方法もあるんだから!

                現状を変えたいと思うなら先ずは自分から行動を起こさないと!」

エトーレ    『……分かりました。やってみます』

シャミラ    「そうこなくっちゃ!さあ、行くわよ!」

 

そう言ってシャミラの家を飛び出すシャミラとエトーレ

その様子を見ていたアステヌは呟いた

 

アステヌ   「まずはザラームに話をしてエトーレをその日の闘獣士として出してもらうお願いをするのが先だと思うんだけど…

                                ここは僕の出番か。

        ザラームはレアなものほど残虐的な趣向で痛みつけたがる。星読みの一族と人間の娘… いいモノに違いないよね」

​まいびと
bottom of page