それから2日、3日と毎日 日の出から日没まで何度も挑戦してどんどん時間が立って行く
エトーレ 『はあああぁぁあ‼︎』
4日目のこの日も灼熱の地で何度も挑戦するエトーレ その度にケイにすんなりかわされた後に投げ飛ばされるばかりで
全く攻撃を入れる事が出来ない
ケイ (俺の見込み違いだったかな…
星読みの一族は天候が読める少しレアな血を引き継いでいるだけで戦闘向きの血ではないのかもな)
エトーレ 『もう1回!!』
体をブルブルさせ体についた砂を払うと勢いをつけて再び全力で走って来る
ケイ (なかなか折れない根性だけは良いんだがな…だが攻撃は当たらない上に単調すぎる)
そう考えながらまたケイは嚙みつこうとしたエトーレをサッとかわし投げ飛ばす
エトーレ 『……っ……クソっ‼︎』
ドサっと音を立てて再び地面に倒れるエトーレ
エトーレ 『もう1回お願いします!!』
エトーレ 『もう1度!』
エトーレ 『もう1回!!』
エトーレ 『まだまだ!』
投げ飛ばされる度になんとかしようと目を真っ赤にさせながら徐々にめり込んでいく姿を見て このまま続けていてもラチが開かないな…と思ったケイは
ケイ 「…エトーレ、今日もそろそろ落陽の時刻だから終わりだ。また明日来るならこい」
そう告げて帰ろうとした。 すると必死な声で
エトーレ 『‼︎ 待って下さい!もう1回!!』
と言って走って来るエトーレ
ケイ 「駄目だ。決まりは決まりだ」
エトーレ 『お願いします!』
ケイ 「駄目だ!」
エトーレ 『どうしても俺、強くなりたいんです!!』
と言って更にスピードを上げて来る
ケイ 「なら、体ではなく頭を動かす時間を取れ!」
そう告げてもまだ向かってくるエトーレに少しイラついた表情をしたケイ
ケイ 「言ってる事が聞こえないのか!!」
そう声を荒げるとエトーレの腹部を目掛けて強烈な蹴りを入れ今までにない勢いで蹴飛ばした
エトーレ 「キャウン!!」
甲高い鳴き声を上げるとガラガラと音を立てて崩れる積み荷 散乱した物の中で強烈な痛みに耐えるようにうずくまるエトーレ
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ケイ 「……お互い少し頭を冷やした方がいい。」
うずくまる姿を見てそのまま立ち去ろうとすると振り返り
ケイ 「一つだけアドバイスしてやろう。お前の戦い方はつまらん。」
そう言い残すとその場を去っていった
地面に倒れたまま ケイが遠くなって行くのをぼんやり見ながらエトーレは考える
またこの感覚だ……
何度やっても結局こうなるんだ
この姿になってもやっぱり俺はダメなままじゃないか……
いや、この姿になれば何か変わるかもと思ってた俺が間違っていたんだ
昔から練習でも本番でも何をやっても1度も勝てやしない
いつも他人任せで、今だってレオさんやカルロさん、 シャミラさんやアステヌさん達が何とかしてくれるかもって心の何処かで思ってる
ケイさんにも1度も攻撃を入れる事さえ出来ないしこのまま闘技場に出て、 シャーロッテさんやみんなの前でぐちゃぐちゃに
されるんだろうな……
そうなったら……俺は……
俺は……
あの日誓った事も……
好きな人を守る事さえも何も出来ずに……
? 「れ……エトーレ!……エトーレ!」
声を聞いてハッと起きあがると目の前には心配そうな顔をしたアステヌがいて 辺りはすっかり暗くなっていた
アステヌ 「エトーレ、大丈夫?仕事終わりに通りかかったら倒れているからびっくりしたよ」
エトーレ 『……はい』
アステヌ 「どうした?なんだか元気がないね」
エトーレ 『………俺、やっぱり無理です』
アステヌ 「……それは、どうして?」
アステヌに聞かれるとエトーレは今の気持ちを1つ1つの言葉をゆっくり紡ぎながらと話し始めた
エトーレ 『俺……どうしたらいいんでしょうか……』
エトーレに尋ねられアステヌは言葉を選びながら話し始めた
アステヌ 「…君は少し頑張り過ぎてるのかもしれないね」
エトーレ 『え?』
アステヌ 「思いつめ過ぎてるって言ったら良いのかな。
話を聞いたら君はここに来る前も毎日練習していたそうじゃないか
努力出来る事は凄い事だし誰にでも出来る事じゃないけど、バネは伸びきったら離さないと跳ねないように
ひと息置く事も大切だよ。
一生は長いようで短いからこそ、たまにはゆっくり生きたっていい。
君みたいに頑張っている人なら尚更ね。僕はそう思うよ」
その言葉を聴くと垂れ下がった耳と尻尾を少しあげるエトーレ
エトーレ 『あの…もう一つ聞いてもいいですか?』
アステヌ 『勿論。僕で良ければ何でも聞くよ』
エトーレ 『俺…ケイさんに俺の戦い方はつまらないと言われたんです。体ではなく頭を動かせとも…
これってどういう意味なんでしょうか…』
アステヌ 「んー。僕も本人じゃないから意味は分からないけど 何事も難しく考えずにシンプルに捉えればいいんじゃないかな。」
それでもまだ難しい顔をするエトーレに
アステヌ 「ねえ、シャミラの所にも行ってみない?」
エトーレ 「?」
アステヌ 「2人で考えるより3人で考えた方が良い案がきっと出るよ!
それに闘技場に出るっていう案を出したのもシャミラだったでしょ?
言い出したんだから、もっと手伝って貰わないとね?」
そうニッコリ微笑んで言った
シャミラ 「ん~そうねぇ……エトはどこに狙いを定めているの?」
エトーレ 「狙い……?」
シャミラ 「…まさか貴方、狙いを定めずに適当に攻撃してるんじゃないでしょうね」
黙るエトーレにシャミラは
シャミラ 「いい?エトーレ。肉食動物が子供や弱っている獲物を吟味して狙いを定めるのと同じように何処を攻撃するか
しっかり決めなさい
でも何処でもいいってわけじゃないわよ。何故そこを狙うのかしっかり自分の頭で考えること 」
エトーレ 『何処を狙うのか、何故そこなのかしっかりと自分の頭で考える……』
シャミラ 「そう。それで―――――
アステヌ 「もし失敗したら何で駄目だったか。次はどうしたら良いのか。だよね?」
シャミラ 「もう、良いところ取らないでよ」
アステヌ 「ごめんごめん。昔悩んでた僕に言ってくれた事、久し振りに思い出したよ。
シンプルな事だけど、焦ったり思い詰めたりすると忘れてしまうんだよね」
するとエトーレは勢いよく立ち上がり
エトーレ 『俺、なんか分かって来た気がします!』
シャミラ 「そう?なら良かったわ』
エトーレ 『あの!ありがとうございました!』
するとシャミラはフッと優しく笑い
シャミラ 「いいのよ。私は戦う事に興味が無いから小さい頃少し習ったこんな事くらいしか教えられないけど、
また何か困ったら聞きに来なさい」
アステヌ 「少し解決したみたいで良かった。」
エトーレ 『はい。それじゃあ、お2人ともおやすみなさい!』
スッキリした表情で部屋を走って出て行くエトーレを見送るとアステヌはシャミラを見て言った
アステヌ 「なんだかエトーレが来てから楽しそうだね」
シャミラ 「そう?まあ あんたと違って反応も良いし楽しいわよ?」
シャミラはぐいっと顔を近づけニヤリと笑って言った
アステヌ 「悪かったね。反応が悪くて」
アステヌは少し不機嫌そうにグイグイとシャミラの肩を押し戻した
アステヌ 「それじゃあ僕も今日は疲れたから帰るよ。」
そう言って立ち上がり伸びをしながら部屋を出て行くアステヌ
シャミラが「たまには隣の部屋のベット使っても良いわよ~」というと遠くから 「すぐに寝始める誰かと一緒にしないでくれ~」
と返事が返ってきた